随分と前
異国で見た、ホテルの壁全体を飾る
錦の鯉が雄大に泳ぐ絵画。
そのスケールの大きさと生き物の様子は
未だ記憶に鮮明。
その日から
我が家のホールもいつか鮮烈な絵画で
埋め尽くしたい
いつか・・・
そんな夢が本当に叶いました。
絵画の輿入れの日は、やっぱり着物で
啓蟄を迎え、生き物たちも地上に顔を
出すころ。少しの暖かな空気に藤色の泥大島を
着てみました。
滑らかな光沢に円文様は、足取りも軽やか。
歩くごとのシャリシャリ音が春の音
帯も満月刺繍でお揃い気分
ようこそおいで下さいました。
今後ともよろしくお願いします。
の気持ちを込めて。
おともは
・藤色円模様の泥大島紬
・満月とウサギの刺繍名古屋帯
・金茶に白花柄の帯揚げ
・灰汁色三部紐にパールの帯留め
最後になりますが、
作者から作品名と詩を預かりました。
「月明かりの夜」 by坂本 澄子(画家)
空に向かい
ぽっかりと開いた
蒼白い 光の窓。
その四角い空間を
見上げて、
じっと私は
待っている
金色に包まれた月が
ゆっくりと姿を現し、
しなやかに揺れる葉が
一斉に虹色の光を纏う。
夢見るような情景に
ふんわり包み込まれ、
私はぽっと色づいた
大輪の花を咲かせる。
蕾がふっくら
またひとつ。
月は静かに
対角線をすべり、
私は瞬きもせず
その姿を追う。
すっかり光の輪が
見えなくなると、
ぐっと渾身の力を込め、
空へと私は舞う。
それは蝶の羽ばたきとなり、
月明かりの大空へ
力の限り飛翔する。
画家の坂本澄子さんとツーショット