
単衣や、月の後半は紗合わせやざっくり木綿一枚で楽しむ季節になりました。
 興味深い史跡や文化財を有す地元。今月は滝が流れる広大な庭園と式台玄関のある母屋の夏の公開があると知り、着物大好きな友と出かけました。

近代和風建築の旧北岡田家住宅

住宅前
太古の昔より、水田や河川交通で財を成した、地元の反映を象徴する広大な敷地にある旧北岡田家住宅は、平成24年に国登録の有形文化財に指定され、今から5年前に町の所有となり、一般公開も期間限定で開催。この日は初夏の公開とあり、簀戸(すど)や敷物を夏用に替えて夏のしつらえ。
 お庭は見事にどうだんの青緑。涼やかな佇まいです。

簀戸の部屋

どうだんの庭
九曜紋と釘隠し
着物の仕事柄からなのか、家紋は興味深く拝見します。
 玄関から座敷に上がると梁の長押しには三本の槍が掛けてあり、螺鈿の装飾のものや、一番下の槍には九曜紋が施され、ご当家の家紋と一目で分かりました。
 それにしても立派な槍。
 権力の象徴を物語っていました。
 
三本の槍と九曜紋
奥の座敷にすすむと、涼やかな簀戸のしつらえ。
 お庭を眺めながら静かな時を過ごし、ふと梁を見渡すと、座敷の4か所に立て6㎝、横8㎝くらいの鶴の金具を見つけました。
 一瞬ですが確か家紋は九曜紋だったはず、家紋は鶴に変わったか?
 廊下にはなんと蝙蝠を施した金具、もしやこの部屋は移築した家屋の寄せ集めなのでは?と独り言の妄想がはじまります。
 ガイドさんに尋ねると、「これは釘隠しといい、装飾に使われました。釘が丸見えでは無粋ですからね。」のご説明をいただきました。
 「寄せ集めの家屋」の思考回路、日頃の了見の狭さに私の無粋にはあきれるばかり。
 蝙蝠は強運の証、魔除けにもよく使われたそう。
 確かにカッコいい。
 
 
 
 
釘隠し
張りや明り取りの美しさ
張りに巻いてある紐は、2階に物入れから、荷物を上げ下げしたり扉を開閉するためのもの。
 
暗くなりがちな廊下の上を天窓にして明り取りにした工夫と美しさ。
 
 100年余前の建築物は「無粋」には無縁。
 日々の暮らしを美しく愉しむを改めて感じ入りました。
紫陽花に見立てた帯で
初夏には着たい青楓の単衣着物。
 
青楓
白地の帯は抽象模様。色目からも紫陽花と勝手に決めて結んでみました。
 絞りの部分がふっくら花びらを演出してくれています。
 
紫陽花の帯と帯締め
日傘や扇子は夏の必需小物

近場でひと昔前を体験し、今を楽しむ。
 まだまだ学びの一途です。
 
秋の公開は11月。秋色のどうだんも必見ですね。
お供は
 ・青楓の単衣
 ・絞り抽象柄模様の名古屋帯
 ・ラベンダー色の縮緬帯揚げ
 ・伊羅保色の三部紐と番梟のブローチ
 ・網代の竹籠
 ・絞りの日傘
 ・鎌倉彫の下駄